夜風夜話 NHKは誰のものか!

「NHK受信料不払い訴訟」の裁判記録とその他の余話

放送されない前川前次官インタビュー。『官邸の最高レベルが言っている」……スクープ情報も黒塗りで官邸に配慮。加計学園疑惑におけるNHKの忖度報道(2017)

 安倍首相が“腹心の友”と呼ぶ加計幸太郎氏が理事長をつとめる加計学園岡山理科大学獣医学部の新設が平成29年(2017)11月14日、林芳正文部科学相によって認可された。同日、その経緯が不透明だと告発した前川喜平前文科事務次官は「我が国の大学行政に大きな汚点を残しました」という談話を発表した。

 この年の5月24日、前川前次官が「行政が大きくゆがめられた」として、「総理のご意向文書は本物です」「あったものをなかったことにはできない」などと公の場で告発の証言に踏み切ったことから、加計学園疑惑は一気に火を噴き、メディアでも大きく取り上げられることになった。

 そこでNHKはこの加計学園疑惑をどう報じたか。どう報じなかったか。
 川本裕司著「変容するNHK~“忖度”とモラル崩壊の現場~」(花伝社刊)の中で、NHKの加計疑惑報道に触れている。
 以下、一部引用。(乙6号証①)

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前川元文科次官「私に最初にインタビューしたのはNHKだが、いまだに放送されていない」

 安倍首相が“腹心の友”と呼ぶ加計幸太郎・加計学園理事長に対する官僚らの忖度があったのではないかと疑念を読んだ加計学園問題では、内閣府文部科学省の手続きを促す内容を裏付けるものとして、5月16日の午後11時台のニュースで文部科学省の内部文書を他社に先駆けて報じた。その際、文書にあった「官邸の最高レベルが言っている」などの部分を黒塗りにして画面に出すなど、官邸に配慮したと受け止められるような不自然さがあった
 NHK関係者によると、加計学園問題を取材する社会部に対し、ある報道局幹部は「君たちは倒閣運動をしているのか」と告げたという。5月16日の第一報後、社会部がこの問題についてのスクープ的情報を含む原稿を提案しても、通常のニュース枠で放送されることがなかった、という。
 
 また前川前次官は6月23日、日本記者クラブの記者会見で「私に最初にインタビューしたのはNHKだが、放送されないままで、いまだに報じられていない」と述べている。
 この件について前川前次官は「日経ビジネスオンライン(2017.9.7)のインタビューで次のように発言している。
 「上からの圧力があったのでしょう。私に接触してきた記者さんは、ものすごく悔しがっていました。それで社会部の取材してきた人たちが、せめてこれだけは映してくれと言って、最後にちらっと映したと。自分たちは取材で先行しているという意地ですよね」。

加計理事長記者会見で現場のNHK記者は必死に質問していたが、その会見内容はほとんど放送されなかった 

 平成30年(2018)10月7日、長い間、疑惑に沈黙を続けていた加計理事長の記者会見が行われた。この会見で、Web情報メディア「リテラlite-ra-com」は「NHKは現場の記者が必死で質問していたのに会見内容をほとんど放送せず」の見出しで、次のような記事を発信している。(乙6号証②)

 ――たとえば、“首相官邸で面談が行われたのは渡邉事務局長が柳瀬首相秘書官と面識・パイプがあったためだが、柳瀬氏といつどこで会ったのかを渡邉氏は覚えていない”とする加計学園側に対し、NHKの記者は「一学園事務局長が総理秘書官にいつどこで会ったのかを覚えていないというのはにわかに信じがたい」と厳しく追及。
 安倍首相と面談したとされる2015年2月25日に加計理事長は何をしていたのかを問い、「覚えておりませんですねえ」と答える加計理事長に、「明確に否定されるのであれば根拠を」「(記録も記憶もないのであれば)あっていないとも言えないですよね」と食い下がり、出張記録の提出を求めた結果、事務局長から「のちほど対応させていただく」という回答を引き出した。

 このNHK記者の厳しい追及の模様は『NEWS23』や『報道ステーション』でも放送されたのだが、NHKは会見が開かれた7日当日の18時と翌8日の早朝5分枠であるストレートニュースで短く伝えただけ。7日の『ニュース7』をはじめ、翌8日の『おはよう日本』や『NHKニュース』『ニュースウオッチ9』で一切取り上げることはなかった。

 前出「変容するNHK」の中で、川本裕司氏は「事実を掘り起こそうとする記者がいる。それを牽制しようとする幹部がいる。上層部は現場任せにする。こうした力学の結果が、日々のニュースに反映されている」と指摘している。

 


加計学園の加計孝太郎理事長が記者会見(朝日新聞)

 

lite-ra.com

 

 *この事例は、令和元年(2019年)5月21日、小田原簡易裁判所(→横浜地裁)に提出した答弁書追加書面「私の言い分」の中で取り上げた疑惑事例のひとつです。