夜風夜話 NHKは誰のものか!

「NHK受信料不払い訴訟」の裁判記録とその他の余話

「日本が監視社会になる」……共謀罪法案(テロ等準備罪)をめぐるNHKの政権寄り偏向報道(放送を語る会モニター報告書より)(2017)

 平成29年(2017)5月19日、政府・与党と日本維新の会は「共謀罪」法案の強行採決に踏み切った。しかしこの日、NHKは国会審議を中継しなかった。さらに5月23日の衆議院本会議での強行採決も、国会中継を行わなかった。そして6月15日早朝、共謀罪法案(「組織的犯罪処罰法案」)は参議院本会議で強行採決され、成立した。

 共謀罪法案は「処罰対象のあいまいさ」「内心の自由の侵害」「日本が監視社会になる」という懸念など、憲法に抵触する「人権侵害」を含め、さまざまな問題点が指摘され、安保法制同様、学生、市民、学者など幅広い層からの激しい反対運動が展開されていた。

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共謀罪NO!!」日比谷集会 2017.5.16

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共謀罪」反対 日弁連主催集会 東京新聞2017.5.19

 

共謀罪」法案国会審議をNHKはどう伝えたか、伝えなかったか?
(視聴者団体「放送を語る会」モニター報告書より)

 別紙付表(乙4号証①)は、視聴者団体「放送を語る会」が同法案の国会審議が始まる前の平成29年(2017)3月から国会が事実上終了する6月16日まで、NHKと民放キー局の代表的なニュース番組をモニター調査した報告書「共謀罪法案国会審議・テレビニュースはどう伝えたか」(2017.9.3発表)から抜粋したものである。
 付表はテレビ朝日報道ステーション」とTBS「NEWS23」が伝えたことで「ニュースウオッチ9」が伝えなかった事項を一覧にしたものだが、ここでも安保法制をめぐる報道と同様に、「政権にとってマイナスになる出来事や審議内容を極力伝えない傾向にある」ことが明らかに証明されている。

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別紙付表


 
 同報告書は「ニュースウオッチ9」の報道について、「第1に、法案をめぐる政治の動きの紹介が主となっていて、言論人や専門家の意見によって問題点、争点を解明する手法がほとんどとられなかったこと」、「第2に、国会審議の伝え方で、一問一答の編集がよく見られ、政府答弁が印象付けられていた。また、全体に政府側の見解の紹介の分量が大きい傾向にあった」などと指摘。
 
 さらに第3の、最大の問題として「重要な審議内容や法案に対する国際社会からのメッセージを伝えず、ネグレクトした例がかなりあった」と指摘。その事例として「報道ステーション」が伝えた4月17日、4月19日、4月21日、4月25日、4月28日、5月9日、5月16日、6月1日の審議内容に注目。
 「これらの審議内容は、いずれも法案のあいまいさや危険性を浮き彫りにするもので、これだけの情報の脱落は大きな問題と言わなければならない」
 「加えて、国連人権理事会のプライバシーに関する特別報告者、ジョセフ・ケナタッチ氏の安倍首相宛書簡についての報道はニュースウオッチ9には見当たらない。ケナタッチ特別報告者の意見は、市民が共謀罪を考えるうえで重要な提起であり、テレビメディアがこぞって紹介しているのに、ニュースウオッチ9での無視は問題であった」と指摘している。(乙4号証②)
 
 まさに「政治的に公平であること」(放送法第4条1項2号)、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」(同第4条1項4号)などに違反し、国民の知る権利に応える公共放送の役割をここでも果たしていないと言える。

 ちなみにNHKは一般的な呼称として使用された「共謀罪法案」を、政府が示した名称「テロ等準備罪」または「共謀罪の構成要件を改めて、テロ等準備罪を新設する法案」を繰り返し使用した。

 元NHKディレクターでアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」館長の池田恵理子氏は、Webメディア「IWJ」のインタビュー(2017.5.29)で、NHKの放送姿勢を「言論統制の一種」だと批判し、NHKだけを観ていると“共謀罪”の恐ろしさも、それを強引に推し進めようとする政権の酷さも見えないようになっている。こういう情報操作の積み重ねが、国民を“マインドコントロール”することにつながるのです」と語っている。(乙4号証③)

 

*共謀罪法案国会審議・テレビニュースはどう伝えたか
*放送を語る会

*Webメディア「IWJ」:出版社勤務、週刊誌記者を経たジャーナリスト岩上安身氏が設立したインディペンデント・ウェブ・ジャーナル。ジャーナリズムの新しい可能性を開拓して注目されている。

 

*この事例は私の受信料不払い訴訟において、小田原簡易裁判所(→横浜地裁)に提出した答弁書追加書面「私の言い分」(令和元年5月21日付)で主張した「放送法違反と思われる事例」のひとつです